地下からのキリスト : D.H.ローレンスの『死んだ男』
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概要
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D.H.ローレンスは, 伝統的なキリスト教に対して, 妥協を許さない強い反感を抱いていたにもかかわらず, ほとんど気も狂わんばかりに宗教的であった. しかし, 彼の宗教性は, 神秘主義者や宗教家のそれとは異なっており, 人間存在に関する地下からの認識とでもいうべきものに基づき, かつ, 無意識の中で, イエス・キリストのイメージに魅了されてもいた. 他方, 後世の神学的誇張を免れたマタイ, マルコ, ルカの, 三共観福音書の中に, イエスのことばや比喩を拾ってみると, D.H.ローレンスの哲学と共通するものを発見するのは不可能ではない. それはおそらく, イエスが人間存在における一種の原型(アーキタイプ)としての要素を多くもっているが故であろう. この試論では, D.H.ローレンスのイエス像の特質を提示し, それが福音書の中のイエス像に, どのように係わっているかを探ってみたつもりである.
- 1982-12-01
著者
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