フッ化水素酸による化学熱傷:肺多発性血栓を中心に
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概要
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フッ化水素酸(HF)は, 高濃度で皮膚に接触したとき局所傷害のみでなく致命的になる. 今回マウスを用いHFの塗布実験(体表面積の1/30以下)を行った結果, 短時間, 小範囲の塗布でも死亡マウスが多発した. 死因に関しては今日まで諸因子がいわれているが病理学的見地から詳細に臓器傷害を検討した報告はない. 解剖所見では肺水腫はなく肺血栓が死因として新たに注目された. 血栓は細気管支域肺動脈, 胞隔内毛細血管に散見され, 塗布面積が大きく塗布時間の長いものほど, その頻度が高く死亡率も高かった. 血小板血栓が主体をなし, 内皮細胞内水腫・空胞状拡張をきたす高度の内皮細胞間水腫などの内皮傷害を認めたが, 内皮細胞の剥離・血小板の内皮下への粘着は認めなかった. 血栓の成因として, 血栓数と内皮傷害の程度および頻度との間に相関性を認め, 内皮傷害に起因した血栓形成因子と抗因子の不均衡が考えられる. フッ素定量結果より内皮傷害へのフッ素の関与がうかがわれた.(1989年8月4日 受付, 1989年9月28日 受理)
- 産業医科大学学会の論文
- 1989-12-01
著者
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