Threshold Effect for Teratogenic Risk of Radiation Depends on Dose-Rate and p53-Dependent Apoptosis
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概要
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[目的]2001年4月より放射線障害防止法関係法令の改正に伴い、妊娠中の女子の腹部表面の等価線量限度は、10mSvから2mSvに変更された。しかし、現実にはヒトに対する低線量・低線量率放射線の影響についての学術的なデータは乏しく、その影響評価は国際的にも大きな議論の的となっている。本研究では、DNA修復系に加えてp53依存性アポトーシスの働きが、催奇性リスクを低線量率被曝においてほとんどゼロにすることを検証した[方法](1)p53(+/+)、p53(-/-)マウスの受精卵を偽妊娠マウスの卵管に移植後、主要器官形成期(胎齢9.5〜10.5日)に^<137>Csγ線を緩照射(線量率1.2mGy/min)し、胎齢18.5日に胎仔及び死亡胚を摘出し外表奇形判定を行った。(2)胎齢9.5から10.5日に2Gy緩照射したp53(+/+)とp53(-/-)マウス胎仔を経時的に取り出し、組織切片作成後TUNEL染色を行い、アポトーシスの頻度を測定した。[結果](1)γ線緩照射後のp53(+/+)マウスは外表奇形頻度が正常レベルであったのに対して、p53(-/-)マウスでは有意な増加(12%)が認められた。(2)p53(+/+)マウスでの放射線誘発アポトーシス頻度は、緩照射開始から12時間でピークに到達した(20%)。照射終了時までピークは持続し、照射終了24時間後には正常レベルに戻った。p53(-/-)マウスではアポトーシスが全く見られなかった。[考察]2Gy緩照射後のp53(+/+)マウスでは外表奇形頻度が正常レベルであるのに対してp53(-/-)マウスでは正常レベルよりも有意に高い結果は、DNA修復機構で修復できなかった細胞を効率よく組織から排除するp53依存性アポトーシスを介した組織修復機構が正常個体に備わっていることを意味する。また、マウス胎仔組織標本中のアポトーシス頻度は緩照射開始12時間後から照射終了時まで一定であることより、損傷細胞の排除に要する期間は12時間が必要と考えられる。DNA修復機構およびp53依存性アポトーシスを介した組織修復機構が協調して機能すると、低レベル放射線で生じる少量のダメージは完全に排除され、組織には蓄積しないものと考えられる。
- 2002-03-01
著者
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