マススクリーニングによって発見された神経芽腫症例と非マススクリーニング例の臨床的特性および予後の相違:北九州市における神経芽腫マススクリーニングの有用性
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概要
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当科腫瘍外来の109例の悪性腫瘍患者のうち,固形腫瘍では神経芽腫が最も多く,開院以来24例が管理されている。神経芽腫はスクリーニング可能で,我々が市医師会と協力して開始した北九州方式によるマススクリーニング(MS)により,当市では6年間に64,885名の6カ月児の中から,7例の神経芽腫が発見されている。当科で管理中の6例においては,血清神経特異性エノラーゼ,フェリチン高値やN-myc遺伝子の増幅あるいは細胞遺伝学的異常など,従来いわれてきた予後に関する危険因子は,認められなかった。病理組織学的には,1歳以上の例では,神経節芽細胞腫が13例中9例を占めていたのに対し,1歳未満では11例中2例にすぎず,そのいずれもがMS例であった。Shimadaらの分類で,MS例の1例は乳児期にはまれで,成熟型と考えられている間質増生型腫瘍であり,自然退縮例も存在したのに対し,1歳以上の非MS例は,13例中9例が死亡している。MS例の中には,成熟または自然退縮過程にあって,良好な予後が期待される神経芽腫が含まれている可能性がある。MS例の治療成績が著しく良好であるにもかかわらず,1歳以上で発症する神経芽腫の予後は,依然として不良であり,年長児の神経芽腫を救済するためには,1歳6カ月健診時に再スクリーニングを取り入れるべきと考えられた。
- 産業医科大学学会の論文
- 1993-12-01
著者
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