EBMとNBM(narrative based medicine) : 医療における物語と対話(教育講演)(第36回日本心身医学会近畿地方会演題抄録)
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概要
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ナラティブベイストメディシン(NBM)は, 医療/医学における新しい概念であるとともに, 新たなパラダイムシフトをもたらす可能性を包含するムーブメントである. NBMの共通のテーマは, 「ナラティブ:『物語』あるいは『語り』という観点から, 医療/医学のすべての分野を見直そうというたいへん広範なものであり, 医学と他の専門分野(文化人類学, 社会学, 心理学, 看護学, 言語学, 倫理学, 文学など)との幅広い学際的な交流を特徴としている. NBMは, 英国の一般診療医(general practitioner)の間から起こってきたムーブメントであり, 臨床において患者自身の病いの体験を理解すること, 患者と良好なコミュニケーションを保つことを重視する. 一般医療の実践という観点からみた場合, NBMの特徴は以下のようにまとめられる. (1)患者の語る「病いの体験の物語」をまるごと傾聴し, 尊重する. (2)医療におけるあらゆる理論や仮説や病態説明を「社会的に構築された物語」として相対的に理解する. (3)複数の異なる物語の共存や併存を許容し, 対話の中から新しい物語が創造されることを重視する. NBMの理論的背景は, 私達が体験する現実世界は客観的に実在すると考えるのではなく, 社会的, 文化的交流の中から常に構成され続けているとする, 広い意味での構成主義, あるいはポストモダン思想である. EBMとNBMは対極的な方法論であると思われがちであるが, 実はそうではない. NBMとEBMは, 目の前の患者の最大幸福を目指す, 臨床現場を重視した, 患者中心の医療の実践のための両輪である. しかしながら, 臨床疫学的, 統計論的な情報であるエビデンス情報を, 臨床現場における医療者と患者との対話のプロセスであるNBMの実践に取り入れるには, 工夫が必要とされる. 真の意味での全人的な医療が必要とされる心身医療の領域において, NBMは有力な視点と実践の方略を提供する. 本講演では, 一般医療および心身医療におけるNBMの実際について述べた.
- 2004-11-01
著者
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