デカルトの「道徳」の根底にある「自己愛」
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概要
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本稿は,デカルトの「道徳」,特に,日常生活において則るべき行為の規則として提示された「道徳」を考察の対象とする.本稿で言う「道徳」とは,フランス語moraleの訳語である.一般にmoraleという語は,どのように行為すべきか,ひいては,いかに生きるべきかについての意見・理論・思想,あるいは規則を指して用いられ,デカルトの時代から現代にいたるまで,基本的な意味に変化はないように思われる.デカルトが「道徳」について語った主なテクストとしては,年代順に以下のものが挙げられる. 『方法序説』(1637年刊) エリザベトあて書簡(特に1645年5月18日づけ以降) シャニュあて書簡(1646年以降) 『哲学の原理』仏訳序文(1647年刊) クリステイナあて書簡(1647年) 『情念論』(1649年刊) 本橋では,第1に,上記のテクスト群から,日常生活において則るべき行為の規則としての「道徳」が提示され,説明された諸テクストを取り上げ,対照・比較したうえ,それらに共通して見出される,デカルトの「道徳」の基本的構造と目標とを明らかにする.そのうえで,第2に,デカルトの「道徳」が「自己愛」とも呼ぶべき人間のもつ根源的な志向に基づいていることを指摘し,第3として,その一方でデカルトが既成の道徳的価値をも尊重し続けたことを指摘する.
- 2003-10-21