社会哲学と生命倫理(4. 生命倫理の哲学的基盤)
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概要
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現代の生命倫理がまず当面する問題は、医療行為を、法や道徳のような社会規範によってどのようにコントロールするか、である。この問題がますます重大になってきたのは、生命科学と医療技術の急速な進歩によって、さまざまな治療法が社会に新しく導入され、伝統的な死生観に大きな衝撃を与えていることによる。これらの新しい技術は, 高度に発達したものではあるが、必ずしも社会の要求に応えるものではない。例えば、それらの多くは予防手段を提供するものではなく、対症療法を提供するにすぎない。それらの多くは非常に高価な治療法であるので、普及することが困難である。それらのあるものは他人の関与を必要とするが、このことは別の倫理的難問を生じさせる。ここから生命倫理にとってのもう一つの重要な課題が提起される。それは、医療技術のこれからの発展をどのようにコントロールするかであり、これの解決のためには社会政策的考察が必要であろう。社会規範の研究と社会政策の研究はどちらも元来、社会哲学に属する。だから、社会哲学の概念、原則、理論を活用することによって, 学問としての生命倫理はいっそう精密なものになりうる、と私は考える。
- 日本生命倫理学会の論文
- 1993-07-20
著者
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