環境と生命のコスト
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論稿は、環境倫理と生命倫理に共通する問題として「コスト」を論じ、我々の生命圏の維持を負担費用への覚悟のもち方から考えることを目的とする。環境経済学では「外部不経済を内部化する」という言い方がされるが、環境倫理の根本的視座としては、地球環境にもはや「外部」はないことを、そして「内部化」の責任分担者として一般市民消費者にも役割があることを確認する必要がある。先進国と発展途上国との、都市住民と地方住民との差別構造を見据え、地域生活から地球環境を展望すること、そして自らのコスト分担も含めて地域の環境自治を担うことが、我々には求められるし、そうした営みは各地に芽生えつつある。生命倫理においても、例えば出生前診断のコストベネフィット論は、分担すべきコストをあえて削減することによってかえって我々の生存の幅を狭めてしまうという危険性がある。内外の生命環境を維持していく費用として、「生命圏安全保障費」なるものを我々は背負っていくことを考えるべきではないか。
- 日本生命倫理学会の論文
- 1999-09-13
著者
関連論文
- いのちの対話から紡ぎ出す、生命圏倫理学(研究A,2005年度長野大学地域研究・一般研究助成金による研究報告)
- 安全の議論とこころの福祉の哲学 : 福祉哲学のために(横山孝子助教授 高遠三和講師退職記念号)
- 環境と生命のコスト