臓器移植と脳死 : 移植医療に今後どう対処していくべきか
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概要
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平成9年10年16日、臓器移植法が施行され、臓器移植のために脳死状態の人から臓器を摘出することが、日本の法律でも認められた。しかしこのことは必ずしも、すべての日本人が脳死からの臓器移植に同意している、ということではない。臓器移植を推進する者は「臓器を無駄にせず、困っている人のために役立てよ。」と主張するが、実際に自分の愛する者の脳死に直面した時、かれらは自己の主張を進んで実行に移せるだろうか?たとえ論理的には正当な主張であっても、臓器を提供する側とされる側双方の心情に共感しつつ、自身実行できるかどうかを吟味し直したうえでなければ、本当に力のある思想は生まれない。医療技術の進歩に伴い、死者の臓器を利用してまでも生きんとする欲望が社会にもたらされた今日、それを単に他人事として批判したり無批判に推奨したりするのではなく、地上のどこかで重い病に苦しんでいる見知らぬ人々のために我々に何ができるのか、ということを我々ひとりひとりが自分の責任として考えねばならぬ時代が到来しつつあるように私は思う。
- 1998-09-07