アメリカにおけるインフォームド・コンセント概念
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概要
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日本でインフォームド・コンセントについて論じられるとき、その考え方の発祥地である米国ではインフォームド・コンセントがうまく機能しているが、日本では文化的背景の違いもあり、直輸入でインフォームド・コンセントを実施するのは難しい、との議論がしばしば見られる。本論は、インフォームド・コンセントの核心をなす自己決定がアメリカにおいても無条件に受け入れられているわけではないことを示そうとするものである。まずインフォームド・コンセントの法的概念の確立に寄与したとされる米国の判決文のいくつかを検討し、患者の自己決定権がどのように扱われているかを考察した。それらの判決はいずれも、一方では患者の自己決定権を基本としつつも、他方では患者の自己決定能力に十分の信頼を置いてはいなかった。それは、インフォームド・コンセントの中心的要素の一つである情報開示にかかわる。医療につきもののリスクについて、すべての情報を開示すれば多くの患者がそれにたじろいでしまうだろうという現実を無視できなかったからである。そのため、それらの判決は、リスク情報開示に際して医師による裁量を認め、完全な情報の提供までは必要がない、との立場をとることとなった。また、1982年の大統領委員会の報告書において、自己決定権を主張・擁護するのみでは実質ある自己決定は不可能であり、専門家の援助・助言が必要であるとの主張が繰り返されていることを確認した。
- 1998-09-07
著者
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