原発性肺癌手術患者に対する運動負荷試験の有用性
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概要
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1986年10月から1990年6月までの聞に兵庫県立成人病センター胸部外科において手術の行われた原発性肺癌症例のうち術前及び術後にトレッドミルによる運動負荷試験が実施された152例を対象とし,この結果が術式の選択や術後心肺合併症の予測に有用か否かについて検討した。レスピレーター管理や気管切闘を要した重症呼吸不全の4例とこれに各種の軽症術後合併症を呈した63例を合わせた67例を合併症群とし,これと合併症を起こさなかった群,非合併症群(85例)と比較した。PaO_2Emaxでは合併症群の73.2±13.7mmHgは非合併症群の82.4±14.7mmHgよりも運動による低下が大きく(p<0.001),PaCO_2は合併症群で上昇した(p<0.05)。VO_2Emax/wtは合併症群22.9±5.4ml/min/kg,非合併症群24.9±6.3ml/min/kgで合併症群が有意(p<0.05)に低値であった。重症呼吸不全の4例に死亡はなかったが,この内3例はVO_2Emax低下症例(VO_2Emax<900ml/min,VO_2Emax/wt<20ml/min/kg)であり更に4例のPaO_2低下度(△PaO_2/△VO_2)はいずれも-15mmHg/l/minを超えるものであった。この値は重症合併症の予測に関する重要な指標になると考え,これを△PaO_2:-15lineと名付けた。1秒率が70%以上の症例の中にもこの-15lineを超えるものが13例あり,これらの術後合併症発生率(69.2%)は-15lineを超えないものに比べ有意(p<0.005)に高かった。以上の如く運動負荷試験によって明らかにされた心肺予備カの評価は術式の選択と心肺不全の発生の予知に寄与し手術死亡を少なくする上で有用であった。
- 神戸大学の論文