阻血性心停止後の再潅流時心電図からみた心筋保護効果の検討
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概要
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成人開心術において大動脈遮断解除後の再潅流時における心電図変化から心筋保護効果を評価する目的で,大動脈遮断解除後の経時的心電図変化と心筋逸脱酵素の変動その他を比較検討した。対象は成人開心術症例39例である。大動脈遮断解除後自然に自己心拍が出現した群と心室細動に陥った群の間,及びPQ間隔が体外循環前値へ回復するまでに要した時間が30分以上であった群と未満の群の間の比較では,大動脈遮断時間,最低直腸温及びCK-MBの変化に有意差が見られなかった。この事実より自己拍動出現の様式. PQ間隔回復時間は必ずしも心筋保護の良否を反映するものではないと考えられた。一方QRS間隔の回復に要した時間が25分以上の群では25分未満の群に比して,大動脈遮断時間が有意に長く,CK-MBの経時的変動及び最高値でも有意な上昇を認めた。このことから, QRS間隔回復の遅延が大動脈遮断による心筋障害,特にHis-Purkinje系への影響を反映しているものと思われた。ST変化については体外循環前と大動脈遮断解除後におけるSTの基線からのずれの差を5分毎に測定して△STとし,△STの最大値(maxST)と△STを体外循環離脱時まで合計した値(ΣST) について検討した。II誘導におけるΣSTが負の値を示したり上昇した場合,あるいはV_5誘導におけるmaxST, ΣSTが上昇した場合には,大動脈遮断時間が有意に長く,術後長期にわたるICUでの管理が必要となり,何らかの心筋障害が生じている可能性が示唆された。以上から大動脈遮断解除後再潅流期の心電図変化が心筋保護の評価法となることが示唆され,術後管理上重要な指標になるものと考えられた。
- 神戸大学の論文