変異インスリン受容体発現細胞におけるDNA合成能及びMAPキナーゼ活性の挙動に関する研究
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概要
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インスリン受容体のC末端部分のインスリン作用伝達における役割を明らかにするため,ヒトインスリン受容体(HIR)の2ケ所の自己リン酸化部位であるチロシン残基(Tyr-1316,1322)をPheに置換した変異受容体(F/YCT_2)を作製した。またATP結合部位のLysをArgに置換した変異受容体(R/K1O18)も作製し合わせて解析した。F/YCT_2の自己リン酸化能はHIRに比べ約30%減少していたが,チロシンキナーゼ活性はHIRとほぼ同等であった。F/YCT_2を発現したCHO(Chinese hamster ovary)細胞(CHO-F/YCT_2)では,HIRを発現した細胞(CHO-HIR)に比べ,インスリンによるDNA合成の用量-反応曲線が左方移動していた。さらにCHO-F/YCT_2では,インスリンによるMAPキナーゼ活性の用量-反応曲線もCHO-HIRより左方に移動していた。一方R/K1018受容体はチロシンキナーゼ活性をもたず,この変異受容体を発現した細胞(CHO-R/K1018)ではインスリンによるDNA合成能を伝達できなかった。またこの細胞ではインスリンによるMAPキナーゼの活性化も生じなかった。以上のことより1)インスリンによるMAPキナーゼの活性化にはインスリン受容体のチロシンキナーゼ活性が必要であること.2)C末端部分のチロシンリン酸化は,MAPキナーゼ及びDMA合成に抑制的に作用していること.が示唆された。
- 神戸大学の論文