3才時点における母子分離状態と思春期の自我構造との関連について
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概要
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精神発達の過程において,幼児期3才は母子分離の時として,また思春期は自己同一性の確立の時として,ともに自我の拡大と社会化という共通の課題に直面する重要な節目である。今回,3才時点において母子分離の観点より精神発達の様相を捉え分類した各グループを追跡調査し,思春期中学2年生時点における心理状況と3才時点との共通性について比較検討した結果,両時点には共通性が存在し,幼児期に示した不安や緊張が思春期にも持ち越される可能性を,また逆に,思春期に示される不安や緊張の原型を幼児期の分離不安にみいだす可能性を示唆する結果となった。黒丸らは,母子分離の観点より3才時点での精神発達を検討し,母子の行動から子どもの分離不安を観察する一定の尺度を作成した。今回3才時点においてこの尺度によって観察された対象児の10年後,13才時点において,質問紙を作成送付し追跡調査を行ない、3才時点で観察分類した母子分離グループ各々における心理状況を自己同一性と社会化の観点より検討した。各群には,人格的な未熟性が対社会状況における低緊張や不安のなさとして表出される群,これとは逆にその未熟性が過度の緊張や不安として表出される群,母子間に存在する不安や緊張が防衛的心理規制となる可能性を示す群としてその心理状況に共通性を見出す結果となった。