Puromycin aminonucleoside にて誘発した実験的ネフローゼラットに対するインシュリン欠乏の影響
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概要
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Puromycin aminonucleoside (PA) にて誘発した実験的ネフローゼラットにおけるトリグリセライド(TG)-リッチリポ蛋白の粒子サイズとTG代謝回転に対するインシュリン欠乏の影響を観察した。ネフローゼラット(N群)は,著名な高TG血症を呈し,TG分泌率(TGSR)は, 正常コントロールラットに比し,軽度であるが有意に上昇した。次に,ストレプトゾトシン(SZ)を,ネフローゼラットに投与した(ND群)。本ラット群はインシュリン欠乏のた引め,TGSRは正常コントロールラットに比し有意に低下したが,その血中TGレベルはネフローゼラットのそれとは差がなかった。このことは,インシュリン欠乏がすでに存在するネフローゼラットの血中TGの除去障害をさらに助長することを意味する。一方,ネフローゼを伴わないインシュリン欠乏ラット(D群)は,正脂血症を呈したが,TGSRは,正常コントロールラットに比し有意に低下し,血中TGの除去障害の存在が考えられた。本ラットに,ネフローゼを作成すると(DN群),TGSRは抑制されたままであるが,その血中TGレベルは著明に上昇した。即ち実験的ネフローゼによるTG除去のさらなる障害が考えられた。尚,DNとND群の問では既に述べたTG代謝のパラメータに有意差は全く認められなかった。また,電子顕微鏡による観察では,ネフローゼ,糖尿病ネフローゼおよび糖尿病ラットのTGリッチリポ蛋白粒子のサイズはいずれもコントロールラットに比し大きく,特にネフローゼラットのそれが最大であった。以上の結果は,血中インシュリンが,実験的ネフローゼラットにおけるTG分泌の増加に必須であり,PAによって誘発されたネフローゼ高TG血症には,TGリッチリポ蛋白の過剰分泌は必須条件ではない事を示している。さらに,TGリッチリポ蛋白の粒子サイズと血中TGの除去障害の程度との間に有意な相関を認めなかったため,リポ蛋白の粒子サイズのみがその血中からの除去を規定するものではないと考えられた。
- 神戸大学の論文