PH/PH/1/K及びPH/PH/1型待ち行列の過渡現象
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概要
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生起間隔分布、サービス時間分布が共に位相型に従う(それぞれの位相総数をm_1、m_2とする)待ち行列系PH/PH/1/K(ここにKは系内許容数)及びPH/PH/1の過渡現象を解析する。PH/PH/1/Kの過渡現象として、溢れ呼の生起過程、全稼動期間長とその期間内における溢れ呼数の同時分布、任意時点間における系内状態の過渡確率を考察する。PH/PH/1の過渡現象は、PH/PH/1/Kの結果の特殊例として導かれる。本解析の基本となるのは到着・サービス位相を考慮した系内個数nからn+1、あるいはnからn-1への初通過時間分布である。これらの初通過時間分布をある種の分解法により導く。例えば、nからn+1への初通過時間分布の場合、これを(i)nから初めて系内呼数変化が起る迄の到着・サービス位相の推移確率、(ii)呼の生起直前直後の到着・サービス位相の推移確率、(iii)呼のサービス終了直前直後の到着・サービス位相の推移確率、(iv)系内呼数n-1からnへの初通過時間分布、の重畳の形で表現する。上記(i)、(ii)、(iii)は簡単な表現式をもつ。系内呼数0から1への初期通過時間分布は自明であり、これを初期値としてnからn+1への初通過時間分布を漸化式の形で得ることができる。系内呼数nからn-1への初通過時間分布についても、系内呼数KからK-1への初通過時間分布を初期値として類似の漸化式を得る。本手法によると、初通過時間分布のラプラス・スティルチェス変換が、高々次元m_1m_2の行列の和と積の他、高々次元min(m_1、m_2)の逆行列を含む漸化式として表現される。次元の高い逆行列の数値計算上の煩雑さを考えると、この結果は注目に値する。上記の初通過時間分布のラプラス・スティルチェス変換を基本として、各過渡現象が以下の形で表現される。(1)溢れ呼の生起過程溢れ呼の生起過程はセミマルゴフとなり、生起間隔分布がm_2×m_2行列で表現される。そのラプラス変換を得る。(2)全稼動期間長全稼動期間長分布がm_2×m_1行列で表現され、そのラプラス・スティルチェス変換を得る。(3)全稼動期間長とその間の溢れ呼数同時分布をラプラス・スティルチェス変換・母関数の形で得る。(4)任意時点間における系内状態の過渡確率系内呼数と到着・サービス位相を値としてもつマルコフ過程の任意時点間の過渡確率のラプラス変換を得る。
- 社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会の論文