序数的選好関係をもつ投票ゲームの安定集合について
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概要
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本論文は、序数的選好関係をもつ投票ゲームにおいて、いかなる場合に安定集合が存在するか、その必要十分条件を明らかにすることを目的とする。多人数の主体から成る社会(組織)において、社会(組織)全体として1つの意思決定を行う際、各主体のもつさまざまな選好関係をどのようにまとめて、意思決定を行えばよいかは、意思決定問題における大きな課題である。特に、経済学においては、社会的選択理論として、Arrow以来数多くの研究が行われてきている。このような問題を、ゲーム理論の枠組を用いて考察しようとする試みも、1970年代半ばより活発になされている。つまり、社会的意思決定の過程を投票ゲームとして定式化し、ゲーム理論の解概念を用いて分析を行おうという試みである。特に、解概念の1つであるコアが、投票ゲームにおいて存在するための必要十分条件は、Nakamuraによって明らかにされ、それは、社会的選択理論に大きな影響を与えた。社会的選択理論においては、コア型の社会的選択関数だけでなく、他の型のものも考察されており、最近FerejohnとMcKelveyにより、安定集合型の社会的選択関数が存在するための必要条件についての研究結果が報告されている。本論文では、FerejohnとMcKelveyの結果を、投票ゲームの観点から見直し、その結果をより発展させて、投票ゲームにおける安定集合存在のための必要十分条件を明確にする。まず、唯1つの安定集合が存在するための必要十分条件は、Nakamuraによって示されたコア存在のための必要十分条件と全く同じものであることを示し、次いで、少なくとも1つの安定集合が存在するための必要十分条件を求め、この条件も、コア存在のための必要十分条件とほぼ等しくなることを示す。この結果から、社会的意思決定の過程において、コア、安定集合の2つの概念のいずれを用いようとも、もちろんその与える結果は異なるものの、その存在に関しては、ほとんど差異がないということができる。
- 社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会の論文
著者
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