有限マルコフ連鎖における最適問題とその固体粒子混合への応用
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概要
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ある種のマルコフ連鎖について、定常分布への収束の速度が早いという意味で最適な初期確率分布を求める問題を解く。これは赤尾等の提案した固体粒子混合過程のモデルの研究から生じた。赤尾等は混合過程を移動と拡散とに分離し、拡散に対しては等確率分岐モデルを提案し、移動に対しては固体粒子の層形成の問題とした。そして最適に形成された粒子層を拡散のみからなる混合過程に供給するという合成混合システムを考え、本文図1のような上部に粒子層の供給口を持ち、粒子が中間の六角形障害物の間を等確率に分岐しながら落下するモデル混合機によって実験を行った。その等確率分岐モデルは供給口の数nと同数の状態と、対称三重対角推移確率行列Pを持つマルコフ連鎖とみなされる。粒子は2種で同形同質とし、半数ずつの供給口がそれぞれの粒子に割り当てられ同量が混合されるとする。2種の一方に着目してその粒子の濃度で初期の層供給のパターンを表現すれば、それは0と1の列となる。そのパターンを初期供給ベクトルと呼び、P(0)と書く。N段後の濃度ベクトルP(N)は、P(0)P^Nで与えられる。p(∞)は定常状態として確率的な完全混合状態を表わし、(1/2、…、1/2)となる。P(N)は状態の確率分布に比例するとして扱える。赤尾等は、例えばn=16の場合、P(0)を(1、0、0、1、1、0、0、1、1、0、0、1、1、0、0、1)と、1001または0110のくりかえしとすると、他の場合にくらべて圧倒的に早く完全混合状態に近ずくことを示した。本論文はその結果に対する数学的基礎を与える。本論では、n次確率行列Pの固有値λ_0 > λ_1 > … > λ_<n-1> > 0と固有ベクトルu_0、u_1、…、u_<n-1>を求め、p(N)とp(∞)の差のノルムを[numerical formula]と表わす。この量はP(0)のP(∞)への収束の速度を与え、条件a_1=a_2=…=a_<k-1>〓0、a_k≠0を満たすkに対する項λ^<2N>_k a^2_kによって草配される。そこで問題は上記の条件を満足するkを最大にする供給ヘクト'ルP(0)を求めることに帰着される。この問題を定式化して状態数が2のべき乗の場合、1001または0110のくりかえしであるp(0)がその解であることを代数学の円分体の性質を用いて証明する。最適層形成の問題は製鉄所の高炉でのコークスと鉱石の混合やエンジンでのガソリンと空気の混合などOR的な問題でも重要である。最適な初期確率分布が求まれば、最適な層形成が行え、混合時間が著しく短縮されるという実用的効果がある。
- 社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会の論文
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