南極昭和基地用循環式トイレット設備の設計について
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概要
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この設備は南極昭和基地において越冬隊員の日常生活に使用するために設計した.設備は大別して大便タンクと小便タンクとに分れて,大便タンクには和式便器・洋式便器・循環ストレーナー・循環ポンプ・排出弁・水面計・操作盤等が,小便タンクには小便器・水面計・放出ポンプ・放出ホース等が取り付けられている.使用人員は20名で,大便タンクは15日間分の容量がある.大便タンク内の汚物はバキュームカーで搬出し,小便タンク内の汚水はポンプによって屋外に放出する.この小便タンクは浴室の排水の貯留も兼ねている.この設備は,発電所に隣接した建物内に設け,エンジンの余熱で加湿し,汚水がタンク内で凍結することがないよう考慮されている.大便タンクには,あらかじめ合成洗滌液を少量入れて,これを基礎として循環使用する.この液は消毒,脱臭,着色,便器の洗滌,凍結防止を目的として特に合成したものである.実際の使用方法は,用を足し終えたら和式便器はペタルを踏む,洋式便器は蓋を閉める,だけでよく,あとはストレーナーとポンプがタイムスイッチによって一定時間運転されて便器の洗滌を行なう.これらはヘリコプターに搭載できるように分解して3つのこん包にまとめられる.輸送時の重量は670kgである.我々は,大便タンクから排出される汚物を焼却する方法を研究中で,これに成功すれば極地における便所の問題も一応解決すると云ってよいだろう.