NOD マウス膵ラ島細胞における ICAM-1 の発現とその膵β細胞破壊における意義
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概要
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I型糖尿病発症モデルであるNODマウスを用いて,細胞性免疫機序による勝β細胞破壊における接着分子ICAM-1の関与について検討を行なった。NODマウス勝ラ島のICAM-1の発現を免疫染色法にて検討したところ,光顕レベルではICAM-1はラ島浸潤リンパ球と血管内皮に発現を認めたが,ラ島細胞には明らかな発現を認めなかった。しかし免疫電顕的には浸潤リンパ球に近接したラ島細胞に明らかに極性をもってICAM-1分子の発現が確認された。ラ島におけるICAM-1分子発現の機序を検討する為, NODマウス由来インスリノーマ細胞株MIN6N8aを用いてフローサイトメトリー解析を行なった。MIN6N8a細胞は,わずかなICAM-1発現量であったが, IFN-γとの培養後には,濃度依存性にICAM-1の発現が増強し,TNF-αによる相乗作用も認められた。CD8陽性のラ島特異的T細胞クローン(YNK1.3) によるMIN6N8a細胞に対する細胞障害性はIFN-γ刺激後には著明に上昇していた。更にこのYNK1.3による細胞障害性は,抗ICAM-1+抗LFA-1モノクローナル抗体の依存下でほぼ完全に抑制された。以上より,NODマウス膵ラ島浸潤免疫細胞から分泌されたサイトカインにより,ラ島細胞には反応性に接着分子ICAM-1の発現が増強され,T細胞によるβ細胞破壊が促進されていることが明らかになった。更に,このICAM-1/LFA-1 pathwayの抗体等による抑制がI型糖尿病の発症予防に有用である可能性が示唆された。
- 神戸大学の論文