肺癌における過酸化脂質の検討
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概要
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腫瘍細胞の遠隔転移に関する機序は不明な点が多いが,フリーラジカルが関与している可能性が示唆されている。フリーラジカル反応は生体でも常に見られ,活性酸素生成と,続いて起こる脂質過酸化が中心である。今回,病理学的検討と併せて,ガスクロマトグラフィー/マススベクトメトリー(GC/MS)法で肺癌組織構成脂質の変化を検討した。肺癌の組織標本をクロロホルム・メタノール溶液中で,バイオトロンとウルトラソニケーターで破砕,構成粗脂質を抽出し,窒素気流下乾固、5%塩酸メタノール中でメチルエステル体を作成した。更にsep-pak cartridgeにより分離したメタノール分画のOH基をBSTFAでTMS化し,メガポアカラムを装着したGC/MSを用いて分析した。病理標本は羊抗SOD IgG抗体を用いて染色し,対比した。肺腺癌では,過酸化脂質の増量が明瞭で,コレストロール分画の酸化が顕著にみられたが,対照肺組織ではこれらの所見が無かった。凍結試料では大細胞癌,扁平上皮癌,腺癌および小細胞癌の順に過酸化脂質の増量が認められた。又, SOD染色では扁平上皮癌,腺癌細胞の細胞質が強く陽性に染色されたが,大細胞癌と小細胞癌では低下していた。肺癌における過酸化脂質の増量,SOD活性の変化などと予後因子との相関は未だ明瞭に把握されていないが,今後検索を進め価値があると考えられる。