シアル酸と糖尿病性血管障害に関する研究
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概要
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糖尿病における血管合併症にはmicroangiopathyとmacroangiopathyの両者を合併していることが多い。著者らはこれまでに糖尿病性血管障害を発症した患者において赤血球膜シアル酸が減少することを見い出してきた。そこで今回,糖尿病性血管障害に影響を与える1)高血糖,2)高脂血症,3)赤血球の老化の3因子と赤血球膜シアル酸との関連性についてさらに網膜・脈絡膜血管の組織学的変化も含めSTZ糖尿病ラットを用いて検討Lた。その結果STZ糖尿病ラットにコレステロール食餌を投与することにより糖尿病性網膜症発症過程での初期組織変化と恩われるArteriola medialis retinaeの血管壁肥厚,小うっ血を伴った小瘤状の拡張と同時に動脈硬化の初期病変を示唆するArteriae ciliates posterior longae内膜の細胞・線維性肥厚及び脂肪沈着が確認された。この際,赤血球膜シアル酸はSTZ糖尿病ラットでの高血糖状態にて低下傾向を認め,これにコレステロール食餌を投与することにより有意に低下した。また血漿総コレステロール値と赤血球膜シアル酸との間に負の相関関係がみられた。赤血球老化による赤血球膜シアル酸含有量には影響はなかった。したがって赤血球膜シアル酸の変動は,糖尿病性血管障害の発症及び進展に関連している可能性があり,赤血球膜シアル酸の測定は糖尿病性血管障害を予測する検査法の1つとして有意義なものと考えられた。