Calcineurinの活性化機構と免疫抑制剤(FK506)の作用機序
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概要
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牛脳より精製したcalcineurin(Ca^<2+> /calmodulin依存性蛋白質脱燐酸化酸素)の脱燐酸化活性に及ぼす種々の薬剤の影響を検討することにより,calcineurinの活性化機構を解析した。calmodulin拮抗薬であるcalmidazolium,trifluoperazine,thioridazine,W-7はcAMP依存性蛋白質燐酸化酸素のRII subunitの燐酸化部位に相当するペプチドやpNPP(para-nitrophenyl phosphate)に対するNi^<2+>刺激によるcalcinenrinの脱燐酸化活性を, calmodulin非存在下においても濃度依存的に抑制した。なかでもcalmidazoliumは,Ca^<2+> / calmodulin刺激による活性に対するのと同等の抑制を示したが, この抑制は少量の精製B subunitをアッセイ系に添加することにより減弱した。calcineurinのMn^<2+>刺激による活性に対して,calmidazoliumは若干の抑制効果を示したが,他のcalmodulin拮抗薬は濃度依存性の活性増強効果を示した。これらのことから,Ni^<2+>とMn^<2+>の活性化の機構は異なっており, B subunitはNi^<2+>による活性化にとって不可欠であると考えられた。また,免疫抑制剤であるFK506とその12kDa結合蛋白質(FKBP12)の複合体は,calmodulin拮抗作用がないにもかかわらずCa^<2+> / calmodulin刺激によるcalcineurinの脱燐酸化活性を強力に抑制したが,それに比べてNi^<2+>やMn<2+>刺激による活性やtrypsinを用いた限定分解による2価イオン非依存性の活性に対する抑制効果は比較的弱かった。以上の結果から,FK506-FKBP12複合体はCa^<2+> / calmodulin依存性の活性形態に対してとくに高い親和性を持つ可能性が示唆され, Ca^<2+> /calmodulinとNi^<2+>やMn^<2+>やtrypsin処理による活性化の機構もまた異なっていることが考えられた。
- 神戸大学の論文