自動車利用抑制策 : 総量抑制のための「マイナスの動機」の役割
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概要
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The paper is a comprehensive analysis of Japanese laws and public policy measures designed to reduce the natural and social environmental damage effects caused by the use of motor vehicles. I first examine traditional legal approaches, which conceptually focus on reducing emissions per vehicle. It has now become clear, however, that despite Japan's strict emission standards, the trend toward higher traffic densities creates insurmountable limits to this approach. Accordingly, various new approaches which are reviewed, taken on natural, regional, and local government levels, seek to enhance use of public transportation. The limitations of such policy measures are also fully examined. The paper then introduces the potential role of disincentive steps and programs, derived from government policy and the author's recommendations, to effectively reduce motor vehicle useage. 世界気候変動枠組み条約に関する京都会議結果,日本政府は2008年から2012年の間に,1990年実績比6パーセントの温室効果ガスの削減義務を負うこととなった。しかし,この義務を達成するための国内政策は未だ確定しておらず,産業界の抵抗が根強いために,義務履行が危ぶまれるという状況である。 温室効果ガスのうち主要な位置を占める二酸化炭素(CO2)についてわが国の排出状況を見ると,産業部門の排出割合が約50パーセントを占めるとはいうものの,産業部門では1970年代以来の公害規制が功を奏して排出割合を下げ続けているし,排出トン数はほぼ横ばいである。一方,運輸部門の排出量は増加の一途をたどっており,運輸省などの試算によると将来的には更なる増加が見込まれる。 運輸部門には船舶・鉄道・航空機・自動車が含まれるが,排出量増加の原因は専ら自動車である。個人的な移動手段としての自家用乗用車から長距離輸送用トラックに至るまで,自動車利用そのものが増加しているのがその原因である。旅客輸送では昭和50年以来∫貨物輸送でも昭和62年以来,自動車の輸送分担比は国内全輸送量の50パーセントを超えてなお上昇中である。 この自動車輸送によるCO2排出の特性は,仕事量に対する汚染の率が非常に高いことにある。自動車は人km(貨物輸送ではトンkm)あたり鉄道(電力分を含む)のおよそ10倍を排出する。結果として,輸送部門全体に占める自動車のCO2排出割合は約9割に上っている。 もちろん,自動車の弊害はこれにとどまらない。浮遊粒子状物質(SPM)などの排出ガスによる健康被害,例年1万人を超える交通事故死.エネルギー効率の悪さ,幹線道路沿いでの騒音・振動による健康上・生活上の被害,生活道路への侵入による生活空間の侵害など,自動車をめぐる問題点を挙げていけば枚挙に暇がない程である。 本稿では,自動車に対するこれまでの規制その他の政策の在り方を再点検し,自動車走行量の効果的な抑制方法を検討する。