ハリガネムシに関する研究 : 第17報 ハリガネムシの皮膚還元層の分布と感受性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1) ハリガネムシの皮膚還元層の機能についての知見をうるため,活動期と非活動期のマルクビクシコメツキ幼虫の皮膚還元層の硝酸銀アンモニアに対する感受性を比較するとともに,非活動期におけるこの虫の酢酸処理や熱湯処理と還元層の感受性との関係,またほかのハリガネムシ類の還元層の感受性などを調べた。2) 春秋の活動期におけるマルクビクシコメツキ幼虫の還元層の感受性は非常に鋭敏であったが,夏冬の非活動期では感受性は全く失われていた。またこの虫が耕土の上層と下層の住みかえを行なうときには両者の中間であった。この虫の還元層の感受性の年変化は,吉田(1951)が調べたこの虫の潜土の深さの年変化の傾向と全く一致した。3) 年間におけるマルクビクシコメツキ幼虫の還元層の感受性の顕著である期間は,春期の3月下旬∼5月中旬の2ヵ月と秋期の9月中旬∼10月下旬の1.5ヵ月で,非常に短期間であった。4) 温度が異常になって耕土の下層に潜入し,冬眠または夏眠にはいっているマルクビクシコメツキ幼虫の還元層は,非還元性物質でおおわれるため感受性はみられなかった。5) この非還元性物質は酸処理により溶出されるものであった。活動期のマルクビクシコメツキ幼虫も熱湯処理や青酸処理をしても感受性はやはりみられた。また休眠中の個体を熱湯処理すれば,還元層の上に分泌された非還元性物質は酸に溶出されやすくなった。6) 冬期耕土の下層に潜入したマルクビクシコメツキ幼虫を温度を変えて飼育し,還元層の感受性が現われるに要する日数を調べた。25°Cおよび30°Cでは飼育後50日目に感受性がみられたが,15°Cおよび20°Cでは50日後にもなお感受性はみられなかった。7) 体水分の喪失速度が速いことが知られているサビキコリ幼虫のほうがマルクビクシコメツキ幼虫よりも還元層の面積が大きく,感受性も高かった。8) サビキコリや朽ち木に生息するウバタマコメツキおよびアカハラクロコメツキ幼虫の還元層の感受性は鋭敏であったが,腐葉土の多い山畑や苗ほ場のような比較的乾燥しやすい場所に生息するクシコメツキやアカアシオオクシコメツキの幼虫のそれは比較的弱く,熟畑でしばしば大発生するマルクビクシコメツキやクロクシコメツキ幼虫のそれは両者の中間であった。
- 1959-12-30
著者
関連論文
- 土壌害虫によるミカン根部の被害解析 : II.ミカンネコナカイガラムシの虫数と被害
- 有機りん剤抵抗性イエバエのアセチルコリンエステラーゼの薬剤に対する感受性について
- Dimilin(PH-6040)の数種昆虫に対する致死効果
- 芝草を加害するガ類の研究 III : 芝草地における殺虫剤の移行と残留
- 土壌病害虫によるミカン根部の被害解析 : 第1報 ミカンの栽培装置
- セミ類の卵期に関する研究(第2報) : クマゼミ卵の休眠覚醒におよぼす温度の影響
- セミ類の卵期に関する研究(第1報) : 卵の形態およびふ化に関する調査
- コガネムシ類の発育ステージと呼吸量との関係
- ハリガネムシに関する研究 : XII.マルクビクシコメツキ幼虫の体水分の喪失
- ハリガネムシに関する研究 : 第17報 ハリガネムシの皮膚還元層の分布と感受性
- A401 芝草を加害するツバヨトウ・シバツトガに対する防除薬剤の選出(薬剤散布)
- ミカンノネカイガラムシの飼育と防除
- ハリガネムシに関する研究 : 第14報 マルクビクシコメツキ幼虫の体内細菌