糞によるエゾヤチネズミとミカドネズミの食性分析
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概要
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北海道産2種のヤチネズミ属(エゾヤチネズミとミカドネズミ)において,糞分析の有効性の確認と,餌動物,植物の同定が試みられ,さらに両種の食物選択について論じられた。1) 餌植物の中ではイネ科およびカヤツリグサ科植物が,表皮細胞と気孔の型と配列の特徴から,その他の植物質と区別された。餌動物の詳細な同定はできなかった。2) 糞分析と胃内容分析を比較すると,糞ではイネ科およびカヤツリグサ科植物が出現しやすい傾向があり,動物質は季節によりバラツキが大きかった。しかし,食物選択性という観点からみると,糞分析は各ネズミ種の食性の特徴を良く表わしていた。3) エゾヤチネズミの食性変動のパターンは食物供給量のそれと一致し,つねに,各季節で最も豊富に存在するものを利用する傾向がみられた。これに対し,ミカドネズミの場合には食物供給とは無関係に,年間を通してあまり変動が無く,比較的少ない種類の食物を選択的に利用する傾向がみられた。4) 両種の食性を比較すると,ミカドネズミはエゾヤチネズミよりも多様な餌植物に対する適応力が小さく,食性の幅が狭いのではないかと考えられた。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1980-05-25