年間の捕獲個体からみたハタネズミの個体群構成と繁殖活動
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概要
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ハタネズミの発生予察に関する研究の基礎として,個体群変動の機構を明らかにするため,1972年1月から同年12月まで,岩手県滝沢村の牧草地において,捕殺法による調査をおこない,生息密度,個体群構成の季節変動および繁殖活動などについて,つぎの結果を得た。1) ヘクタールあたりの生息密度は,季節によって異なるものの20∼100頭の範囲にあり,林地にくらべて多い傾向にあった。年間の生息密度の推移は,6∼7月と11月をそれぞれピークとする2山型の季節変動を示した。2) 体重にもとづき捕獲個体を幼体・亜成体・成体の発育段階に令区分した。個体群の令構成からみて,越冬個体は8月までに死亡し,夏には春生まれの個体が現われて数は増えるが,これらも冬までには死亡する。ついで秋生まれが現われ,これが越冬個体群になると推定された。3) 繁殖期は,5月,7月,9∼10月をそれぞれピークとする3山型を示したが,7月のピークは6月の捕獲個体中の越冬個体の量によって決定されることから,通常は,5∼7月,9∼10月をピークとする2山型であり,生息密度の季節変動の型と一致する。4) 個体群変動は,直接的には当年個体の増加と減少によっておこるが,当年個体を生みだす春の越冬個体群の大きさも影響していると考えられる。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1974-03-25