ミカンハモグリガ個体群の動態 : とくに分布構造の面から
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概要
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ミカンハモグリガ幼虫個体群のほ場における分布構造を明らかにすると共に,分布形成過程や死亡過程の解析を通じて,本種個体群の空間的な動態の特性を検討した。1) 幼虫分布の基本単位は個体ではなく,ルーズなclumpであり,これは雌成虫による産卵が,1本の新梢に続けて行なわれることに由来していると思われる。このようなclumpがほ場内では集中的な分布をしているが,これは雌成虫の産卵活動の集中性と共に,樹あたり新梢数の変異など,環境の異質性に影響されるためであろう。2) 1本の樹の中での葉あたり卵の分布は,密度が低いと一様的で,密度が高くなると集中的となる。これは雌成虫が既産卵葉をさけて産卵する性質をもっていることと,それぞれの葉に異質性があることの複合された結果であると思われる。葉あたり幼虫分布はポアソン分布に近い形となったが,産下卵の分布様式に対して個体単位にランダムな死亡が起こった後,幼虫がふ化したことからも説明される。3) 幼虫後半期と蛹期に起こった死亡過程は,ほ場全体の個体群密度に関しては密度依存的な傾向をもっている。これに対し,局所的(樹,梢,葉単位)な個体群に関しては,幼虫期,蛹期ともそれぞれの密度にあまり関係なく,またall-or-none的傾向を示しており,個体群密度の局所的な変異を増加させている。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1972-09-25