カイコの交尾および未交尾雌蛾における腹部末端神経球内運動ニューロンの自発放電(S.M.GIX)活性と神経球外液のNa^+, K^+濃度
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概要
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カイコの雌蛾において,神経入力を完全に遮断した腹部末端神経球(GIX)の神経束から誘導できるインパルス放電(S.M. GIX)の放電活性は交尾によって高まる。本報ではこの現象を起こす機構について電気生理学的解析を試みた。その目的で,分離GIX標本を浸す外液のNa+またはK+濃度の変化が交尾蛾と無交尾雌のS.M. GIX活性におよぼす影響について比較検討した。今回の実験ではS.M. GIXはGIXから派出する神経束の一つN1から細胞外誘導法によって誘導した。標準リンゲル液中で誘導を行なうと,交尾蛾の方が無交尾蛾のS.M. GIX活性よりも高い傾向を示した。1mMおよび10mMのNa+添加リンゲル液中では交尾蛾のS.M. GIX活性は無交尾蛾の場合と比較してきわめて高い値を示した。1mMおよび10mMのK+添加リンゲル液中では,無交尾蛾のS.M. GIX活性が交尾雌の場合より高い傾向を示した。交尾と無交尾のS.M. GIX間に見られるこの様な相異は,リンゲル液の交換により消失した。したがって交尾は雌蛾の体液状態に何等かの変化を引き起こすものと考えられた。一方,カイコのように体液のNa/K比が低い食植性昆虫では,神経系を取り囲むnerve sheathがNa+やK+にたいして選択的透過性を有し,そのために神経細胞を浸す液のNa/K比が適当な値をとるように制御されていると考えられる。交尾によって引き起こされる体液状態の変化は,そのような透過性の制御機構に作用し,神経細胞を浸す液のNa/K比を交尾前とは異なったレベルにするものと推測された。
- 1971-12-25
著者
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