ヒメトビウンカのマラソンに対する抵抗性
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概要
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従来,ヒメトビウンカの防除にはマラソンが多く使用されてきたが,広島県の4市町では,1964年に空中散布したマラソンの効果が前年度までのものより著しく悪かった。しかしこの年に,上記以外の場所ではマラソンの空中散布や地上防除で別に防除に不都合はなかった。そこで広島県を主体に全国各地から採集したヒメトビウンカのマラソンに対する抵抗力を調べ,各個体群の抵抗力の変化が過去におけるマラソンの使用状態に関連したマラソン抵抗性の発達であるかどうかを検討した。マラソンの致死薬量はそれぞれの個体群で著しく異なっており,大阪府長野個体群では,LD-50が最も低く,雌成虫では53.4μg/tube,雄成虫では33.0μg/tubeであった。一方,LD-50が最も高かったのは,広島県千代田個体群で,LD-50は雌成虫が343.1μg/tube,雄成虫が315.7μg/tubeであった。N.Os.個体群とC.H.個体群のLD-50の比率は雌成虫が1:6.4,雄成虫が1:9.6であった。マラソンに感受性,抵抗性と低水準抵抗性の各個体群の地理的分布の状態をみると,移動性が大きいといわれるヒメトビウンカの場合でも,マラソンに対する抵抗性はそれぞれの場所で独自に発達したもののようである。各個体群のマラソンに対する感受性の標準偏差とLD-84との間には正の相関がみとめられ,ヒメトビウンカのマラソンに対する抵抗力の増大は,反応の不均一性をともなっていた。過去9ヵ年間のマラソン使用量と抵抗力との間にはr=0.693の相関がみとめられた。広島県下の広い地域では,マラソンの連続使用がヒメトビウンカのマラソンに対する抵抗性の発達に影響し,各個体群の抵抗力の発達程度は過去のマラソン使用量に関連していることが明らかにされた。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1965-12-25