インド・ラージャスターン州のラージプート女性の宗教的慣行 : ヒンドゥー女性にとっての自己犠牲の意味
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概要
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本稿では,ラージプート女性の宗教的慣行-パルダー(女性隔離),ヴラタ(戒行),豊饒儀礼を行為者の視点から分析し,それらを通して女性主体の女性観を提示することを試みる。従来の男性中心の女性論では,女性のセクシャリティは両義的であるが,男性を通じて統御されると社会に繁栄をもたらすとされる。しかし,女性がパルダーやヴラタをおこなう意味はセクシャリティを自分で統御し,その危険性を豊饒性に転換することにある。また,ラージプート女性の中でも,特に「王の妻」にあたる女性は貞女の鏡として,村中で最も厳格に女性隔離や戒行を順守する一方,村落を代表して儀礼をおこなう。村人たちは村の繁栄が彼女の儀礼に依存すると考えており,儀礼は彼女の力を村人に示し,宗教的権威を獲得する場となっている。パルダーやヴラタによって危険な力を規制し,儀礼においてその力を村人のために発揮することを通して,「王の妻」としてのアイデンティティが形成される。
- 1995-06-30