ニュージーランド・マオリにおける集団形成の原理 : ハプの概念を中心として
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概要
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ニュージーランド・マオリのハプ概念は従来,単系出自集団とは異なる型として取り上げられてきた。祖先との関係を辿るのに男女双方のつながりを利用する為,始祖の子孫全てを含むカテゴリーと,その中でも他の要素で成員が限定されて作られる集団という,二つのハプの概念が考えられてきた。筆者は北島北部の町Waitangiで1992年に9ヶ月滞在し,マオリの集団は主会場マラエにおいて作られ,その人々はタンガタ・フェヌア(土地の人)と呼ばれる事を知った。その成員権は土地への定着度を指標に語られてきた。一方,ハプは複数に属せるので状況的に他人に関係付けたり威信を示す為に戦略的に使われていた。筆者はこのタンガタ・フェヌアを「土地の相」,ハプで語られる人々のカテゴリーを「祖先の相」として分けて考え,その二相がマラエで結びついていると捉えた。マオリの語彙を元に,マオリの社会組織のあり方の再検討を試みたのである。