ティンギャンの平和協定単位 : フィリピン山地民社会における<共同体>再考
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概要
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北部フィリピン,コディリエラ山地民社会の研究では,相互に独立し,内的統合性の強い<共同体>や<共同体>間関係を律する平和協定制度の存在が指摘されてきた。だが平和協定制度はティンギャンのように<共同体>の存在しない社会でも発達している。本稿では,ティンギャンのムラと平和協定単位という2種類の団体的な地域集団の諸性格や,両者間の関連のしかたが検討される。そしてティンギャン社会では,この2種類の集団と密接に関わるものとして,人々の交流の安全を保障する領域がゆるやかに広がっていることが明らかになる。今日のコルディリエラ諸社会の動態を理解し,また広く東南アジア諸社会との社会組織の比較研究を行うためには,<共同体>よりもむしろ,この安全領域に着目するほうが有益であろう。
- 日本文化人類学会の論文
- 1994-12-30