生計維持機構としての社会関係 : ベンバ女性の生活ストラテジー
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概要
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ザンビアのウッドランド帯にすむベンバ族の民族誌的特徴は、チテメネ・システム(焼畑)、母系社会、王国というキーワードに集約できる。この諸特徴を結びつけうる生態人類学的分析の方向を探る試みとして、この論稿は、ベンバの生計維持機構を女性の視点から分析することによってベンバ女性の生存戦略を明らかにし、ベンバの社会的特性と結びつけて検討することを目的としている。チテメネを基盤とする生計経済において、その伐採を担う夫の存在はきわめて重要である。しかし平準化機構がミニマム・レベルの生計を保証するという条件下にあって、離婚が多発するベンバの社会文化的特性を背景とすると、女性の長期的生活戦略はいかに伐採労働力を得るかに絞られる。婚資労働や共同労働慣行など、多用なカテゴリーに属する男性労働力の動員を可能にする制度的裏付けを基礎として、女性たちは母系の血縁をたぐって労働力を募るだけでなく、父系や地縁的関係にある他の女性との連帯によって非親族の男性をも動員する。つまり、幅広く張りめぐらされた多様な社会関係の束が、多用な男性労働を集積する契機となっているといえる。人々がきわめて頻繁に移動し、様々な生活行為が社会的位相に直結するベンバ社会において、女性が男性労働力を安定的に確保するという生計上の課題は、他の女性を含む、村の社会関係の創出と維持の問題へと収歛していくのである。
- 日本文化人類学会の論文
- 1988-06-30