『伝統文化』を「名乗る」こと : カナダ・サーニッチ族の神話,地名,個人名の今日的意味について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
伝統の記述は,その動態性が指摘されて以来,民族誌においても客観的に「伝統」とするのが一般的となった。しかし,それは観察者側の客観性のみに注意が向けられていて,対象「集団」側の伝統に対する頑固な「信念」を忘れがちである。そこで,伝統に対して客観性を求めるならば,対象の「集団」が主観的に捉えている自らの『伝統』と観察者の視点から確認される「伝統」を明確に区別しておく必要があると思われる。本論はカナダ先住民が主観的に捉えている『伝統』に焦点をあて,その『伝統文化』とユーロカナディアンの先住民に対する「イメージ」の関係について検討し,先住民の文化復興運動への影響について考察する。さらに,その考察から導き出せる状況のなかで,カナダのサニーッチ族は復興している神話,地名,個人名が現代のカナダ社会にとってどのような意味を持つと考えているのか検討する。
- 1996-06-30