医療過誤と刑事責任
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概要
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本稿は,医療過誤事件の判例の中から,医療行為の刑事過失責任についてその動向を概観し,医療行為と刑法の関係を考察したものである.これまで医療過誤として問題となった点は,初歩的な技術ミスに対してであった.それは医療行為者の直接的な過失行為に対してであり,その意味においては刑法の個人責任主義の原則にかなうものであった.しかし近時,看護婦や医療補助者に対する医師の指示・監督上の過失の問題や,医学上の判断・措置の適否にまで及んで刑事過失を論じようとする傾向がみられ,医療関係者の刑事責任の範囲が拡大化の傾向がみられる.そこでこの医療過誤における注意義務の特殊性を過失認定の際にどのように認めていくかについて,可罰的な過失を限定的にとらえ,医学の発展に障害とならないように留意しなければならない事を主張した.
- 1990-03-25