移転価格税制執行における独立企業間価格算定方法の問題の検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
企業の国際化が進展する中,国際租税摩擦は近年ますます激化の様相を呈している。特に,取引量の多い関連者間取引から生ずる所得に対して,各国は移転価格税制による課税権行使を一層強化している。一方,多国籍企業としては,殆どの国及び国連機関において規定されている独立企業間原則の観点から,各国の移転価格税制への対応を講じてはいるものの,移転価格にまつわる紛争は,企業と税務当局,及び各国税務当局間で一向に絶えない。これは,当該税制に規定されている独立企業間原則の基準そのもの,およびその適用上の困難さに起因している。具体的には,比較対象取引の欠如,公開データの欠如,各国ごとの選好算定方法の相違,及び国毎の特殊要因に関する取扱いのコンセンサスの欠如等が挙げられる。この移転価格問題は,今日取引形態が電子商取引のように複雑化し,無形資産の重要性が増し,企業の統合が加速度的に進展するなか,ますます深刻になりつつある。こうした現状下,移転価格税務理論の限界も認識した上で,より経済実態に即した形で移転価格税制を運用していくことが国際租税摩擦緩和には必要となろう。
- 千葉商科大学の論文
- 2003-03-31