産業金融モデルを中核とする複線的金融システム
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概要
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2002年9月の金融審議会答申は日本版ビッグバン以降初めての金融システム展望であり,従来型の銀行を経由する資金仲介である産業金融モデルも存在するが,今後は証券市場の機能を活用する資金仲介である市場金融モデルを中核とする複線的金融システムヘの再構築が必要であるとしている。これまでは産業金融モデルが中心なので金融リスクのほとんどが銀行に集中し,銀行がこれを支えきれなくなっているのは事実であり,リスク分散型の市場金融モデルを強化していく必要があるとの論旨自体は首肯できる。しかし,資金仲介ないし金融モデルを決定するのは国民の金融資産選好である。我が国国民の安全性志向は強く,預貯金を選好し,リスク資産に対する関心は著しく低い。我が国では今後とも産業金融モデルを中核とせざるを得ない。答申は理念先行であり,現実を軽視している。今後強化すべき市場金融モデルの最大の問題点は証券会社の信頼性の低さである。一方,有力な証券会社を傘下に持つメガバンクを中核とする総合金融サービスが成立している。銀行という相対的に高い信頼性をバックとしたこの総合金融サービスグループがこれからの市場金融モデルの有力な担い手として期待される。
- 千葉商科大学の論文
- 2003-03-31