包括利益計算の枠組
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概要
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本稿は、米国において包括利益の計算が求められた要因、その特徴、およびその意味を明らかにすることを目的としている。財務報告の利用者には、企業における将来のキャッシュ・フロー(以下、CF)を予測するうえで役立つ情報が提供されなければならない。そして、企業における将来CFの予測を行ううえでは、経営者の恣意性が混入する危険性がある不確実性が排除され、過去のCFに関する実績と将来CFを発生させる項目の現在の状況を示している情報が必要となる。ただし、将来CFを発生させ得る項目に対しては、過去の実績を示すうえで用いられてきた実現という認識規準を使うことができないため新たな財務報告のための認識規準が必要となり、財務会計基準審議会(以下、FASB)は実現可能性という規準を提唱した。実現可能性の内容は井尻教授が提唱する「硬度」という概念と一致している。そして、現実に測定・開示されている「その他の包括利益」項目はすべて相当の「硬度」を有している。すなわち包括利益計算では、相当の「硬度」を確保した上で、経営者の主観性に起因する不確実性を除外した過去の実績と現在の状況に関するCF情報の提供が行われる。
- 東京情報大学の論文
- 2005-02-28