口腔内セネストパチーの民俗精神医学的研究
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概要
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口腔内セネストパチーに関する精神病理学的研究は少なく,セネストパチーの対象としてなぜ口や歯が選ばれるのか分からないままである。民俗学的知見によれば,口や歯は唾液とともに境界神的,呪術的役割を果たしている部位である。4例の女性の口腔内セネストパチー患者について民俗精神医学的立場から検討した。彼女らは窮地に立たされ絶望せざるを得ない状況のなか,急激な心的緊張の低下をきたし,基層文化が無意識の世界から甦り,災厄や苦しみから逃れようとして,呪術の場として口を選び,不浄,悪穢,疫病などを体内から追い出そうとしているかのように思われる。口腔内セネストパチーの異常対象物が身体と異質性の強い物質で表現される背景には,仏教説話が影響しているかのように思われる。
- 藍野大学の論文