看護学生の脳死・臓器移植に対する認知
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概要
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看護学生の脳死・臓器移植に対する考えを知り,看護教育における脳死・臓器移植問題について検討する示唆を得ることを目的として調査を行った。短期大学の看護学科学生158人を対象に,脳死・臓器移植問題に対して,1.脳死を「人の死」として認めるか否か,およびその理由(自分,家族,看護婦の立場別の意見を含む),2.臓器移植を認めるか否か,及びその理由(立場別の意見を含む),3.この問題でなされるべき議論の内容(8領域),について調査を行った。回収率は96%であり,以下の点が明らかになった。1)看護学生は自分自身は脳死を家族の自分の死とし,できれば臓器を提供して人の役に立ちたい。2)家族の場合は脳死を家族の死とは認めにくく,必要な場合は臓器移植を受けさせたい,臓器を提供するのは躊躇するが,本人の意志を尊重したい。3)看護婦の立場では患者やその家族の意志に沿う方向で援助したいが決して強要してはならない。4)議論すべき内容については様々な論点について記述され,8領域の重要性は,医学・身体的領域,心理・情緒的領域,倫理・哲学的領域,法律・社会的領域,看護・援助的領域,経済的領域,教育的領域,宗教的領域の順となった。看護教育における脳死・臓器移植問題は,看護学生が1)立場によって本問題を考える時には内容の優先性が異なるということ,2)一つの事柄(例えば「脳死の判定基準」)がいくつも領域に影響を及ぼしあうということを理解するのに最適な問題だということが示唆された。
- 1995-03-25