多動児Y君への絵本を介した発達支援の試み
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概要
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本研究は,注意欠陥多動症と診断されたY君に絵本を媒介とした発達支援を試みた実践報告である。筆者はY君に対して1994年9月より週1回,大学の教室で,絵本の読み聞かせ,絵本づくり,知覚運動技能のためのワークシートを中心にかかわりを続けた。Y君は絵本に親しみ,より高い言語能力を獲得していった。また,知覚運動技能が改善され始め,それまで抵抗感がたいへん強かった「絵を描くこと」に積極的に取り組む姿勢が表れてきた。同じ頃,多動傾向が弱まり,家庭や学校での生活にも落ち着きと意欲的態度が認められた。何かを契機とした一連の能動的な活動の形成が子どもの意欲と主体性を芽生えさせ,それに支えられて積極的行動が拡大し,発達を更に大きく前進させることを知った。
- 1995-03-10