イヌ出血性ショックモデルにおけるHypertonic Saline Dextran投与後の循環動態の変化とnitric oxideの関与
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概要
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Hypertonic Saline Dextran (HSD)は,出血性ショックや熱傷ショックに対して少量bolus投与(4ml/kg)で心拍出量(CO)を増加させることが知られている.その作用機序としては,循環血漿量増加作用,末梢血管拡張作用,心収縮性増強作用が報告されているが,その一方で投与直後に起こる著明な抹消血管抵抗(SVR)の減少と一過性の平均血圧(mBP)の低下の原因は未だ解明されていない.我々は,このHSD投与直後のSVRの減少に血管内皮由来弛緩因子である一酸化窒素(NO)が関与しているという仮説を立つ,イヌ出血性ショックモデルにnitric oxide synthase阻害剤であるL-NMMAを投与することで,これらSVRとmBPの反応がどのように変化するのかを検討した.雑種成犬をL-NNMA投与群(n=6)とコントロール群(n=6)の2群に分け,両群とも大腿動脈から脱血して約30分間mBPを50mmHgに維持した.その後,L-NMMA投与後には5mg/kgのL-NMMAを静脈内投与した.コントロール群には同量の生理食塩液を投与した.次いで両群に4ml/kgのHSDを30秒間で投与し,直後の循環動態を反復測定分散分析法で比較検討した。脱血前,脱血後,HSD投与の前後における心機能には2群間で有意な差は見られなかった.HSD投与直後の循環動態では,両群ともmBPは急激に低下し,それに引き続いてCOの増加が認められた.SVRの変化については両群間で有意差を認めた(p=0.017).すなわち,コントロール群では投与直後より投与前値の20%近くまで急激に減少した後,90秒頃から増加した.一方L-NMMA投与群ではSVRは40〜120秒の間でコントロール群に比べて緩徐に減少し,120秒以降ゆっくりと投与前値の60%まで増加した.L-NMMAによるSVR減少の抑制効果は部分的であったことからHSD投与直後のSVR減少の一部にNOが関与していることが示唆された.
- 川崎医科大学の論文
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