啓蒙主義とカントの教育論
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
十八世紀ヨーロッパは啓蒙主義の時代であり、人間性の開発ということが時代の大きな関心事であった。そして、人間形成に人びとの関心が注がれることは、当然のことながら、教育のあり方をも変えていく。とりわけドイツでは、十八世紀は「啓蒙の世紀」であると同時に「教育の世紀」といわれ、ヨーロッパ諸国に先駆けて、新しい教育の理念の構築と、それを具体化するための制度の整備が進められた時代であった。カントが短期間ながらもケーニヒスベルク大学で人間学と平行して教育学の講義を担当していたのもこのような時代の趨勢と無縁ではない。カントは啓蒙主義の完成者といわれるが、かれにとって啓蒙とは、人間性の啓蒙のことであり、人間が未成年(Unmundigkeit)の状態から抜けだすことであった。カントの教育論で、教育の目標に掲げられるのは、人間の成年(Mundigkeit)状態であり、それは人間性の完成した状態である。人間は個人として特有の発達段階を経て、未成年から成年の状態に達する。だが、人間は個人として生きるものではない。そのために、個人としての人間が相互に交わる市民社会(burgerliche gesellschaft)も啓蒙されなければならない。カントの教育論の特徴は、個人の生き方だけでなく、個人が帰属する社会や時代も啓蒙の対象であり教育の対象となる点である。
- 大分大学の論文
著者
関連論文
- 啓蒙主義とカントの教育論
- カント哲学における人間学の構想
- カントの思考世界と日本
- カントの地理学
- 機械論とカント自然哲学
- 機械論とカント自然哲学
- ヘーゲル宗教観の成立
- カントの合目的性理論について
- カント「判断力批判」における崇高の概念
- シラ-とカント批判哲学のかかわりについて-2-