時価主義会計-実体資本維持会計-に関する私見
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概要
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時価主義会計には,主に次のような批判がある。まず,数値に客観性がないということが言われる。これに対しては次のように言うことができる。たとえば,土地の価額には固定資産評価額,路線価格,公示価格がある。このうち,時価としては公示価格が適切である。公示価格は所有区画ごとに毎年公表されている。この数値は建設省が認定したものであり,客観性がある。建物,機械等については日本銀行統計局物価統計課作成の物価指数年報に表示されているそれぞれに関係する個々の指数を用いれば良い。これらの数値には客観性がある。次に,会計制度として練れていないということが言われる。オランダの多国籍企業であるフィリップス電器会社は多年にわたってこの制度を用いてきている。これについては研究資料もでている。他に,ベル・カナダ社,カナダ・デュポン社,エディマッチ社等がこの制度を採用している。また,アメリカのSECは補足資料として棚卸資産,売上原価および減価償却費の時価情報の開示を求めている。わが国からも,すでに三井物産,本田技研,日立,ソニー,キャノン等の会社が時価情報をアメリカのSECに対して提供している。このように,時価主義会計は全世界に徐々に制度に取り入れられつつある。時価主義会計には,他にも批判がある。これらに答えるためにもこの会計理論に対する基本的思考が考察されねばならないであろう。そこで,本稿ではこの理論における目的観や機能観,会計主体観や資本維持観等について考察したい。
- 1998-09-30