加須市周辺に散見する中島撫山の碑文の解説
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概要
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羽生市中手子林の八幡社境内に「算師柳齋翁之壽碑」が建っている。これは当地の和算師匠茂木柳齋の門弟たちが師没の前年に師恩を感謝し、その長寿を頌して建立したものである。近郷近在の志有る者から崇敬されて、育英に当たる郷先生のありし日の姿がしのばれるとともに、地域社会に於ける教育の実体を窺うことができて興味をそそられる。また、「和算」という、現代からは忘れ去られようとしている学問の内容を知ることもできて、貴重な教育資料でもある。篆額は、「算師柳齋翁之壽碑」とあり、東京の亀田英(慶応二年一八六六-没年不詳)の筆になる。英は字を之彦、号を雲鵬という。鵬斎、綾瀬、鶯谷、雲鵬と続く亀田家四代目の儒者で、漢籍を出稽古で講義するかたわら画業(洋画のちに南画)で身を立てた。書、篆刻にも秀でている。撫山より四十歳も年少であったが撫山は師家の嗣子として敬重した。撫山撰文雲鵬篆額の石碑は他にも見られる。
- 埼玉短期大学の論文
- 2003-03-31