我が国における遺跡保護政策について : 政策実施過程からの検討
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概要
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論説佐賀県吉野ヶ里遺跡などの遺跡の発掘がマスコミの報道を賑わすようになって久しい。しかし、そうではあるものの、遺跡自体を社会全体の中でいかに保護していくべきか、開発と保護との整合性をどのように保つべきかといった点については、マスコミや人々の関心は遺跡の発掘への関心に比すると不充分であるように思われる。なぜ、貴重な人類の文化遺産である遺跡を保護することができないのか。本論ではこのような問題を内包する我が国の遺跡保護政策において、既存の議論とは異なり、その問題点と処方箋を示すために政策実施過程から検討する。まず、政策実施過程から分析するためのフレームワーク(目的、行政機関、文化財保護法上の行政過程、財源、利害関係者、政府間・政府内関係、実施担当機関の特性)について述べた。これをもとに、滋賀県と同県野洲町を調査対象地域として政策実施過程分析を試みる。本論の分析の結果、遺跡保護政策の実施過程上の失敗(組織間での協議の失敗・資源の不足・政策の社会的認知度の低さ)と、実施過程から顕在化した制度上の問題点(目的が曖昧・都道府県の権限が強固・開発制度と保護制度の分離・法律上の手続きの未整備)を実証した。そして、本論で政策実施過程から分析することにより、次の論点が明らかとなった。それは実施過程における運用の失敗とそれを規定する制度の欠陥であり、且つ、土地利用規制の問題を正面から論じてこなかったことである。
- 同志社大学の論文