位山演習林における天然水の水質
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概要
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森林における水保全機能は,水源かん養機能とともに雨水の水質浄化機能があるといわれている。近年,酸性雨の問題や環境問題への意識の高まりから,森林の機能に期待される役割は大きなものであるといえる。本研究では,岐阜大学農学部附属位山演習林において,1996年から林外雨,各林分のスルーフォール,調査対象木の樹幹流,および3つの流域の渓流水を採水し,森林流域を通過する間に生じる雨水の水質を調査・分析した。調査対象木は,樹齢10年の人工林のヒノキ,樹齢約200年の天然生林のビノキ,落葉広葉樹林のブナ,ミズナラ,イヌブナとした。採水したほとんどの林外雨が,酸性雨に値するものであった。酸性の雨水を,針葉樹は酸性側に,広葉樹は中性側にさせるといわれるが,本調査地でも同様な結果が得られた。さらに,個体サイズが大きい老齢なヒノキの方が,より酸性側に変化させることがわかった。ECは,林外雨<スルーフォール<樹幹流の順で増加し,樹体からの洗脱,溶脱物質の存在を示唆した。カテオン溶存量を検討すると,広葉樹ではブナ,イヌブナがCa型,ミズナラがK型に分けられることがわかった。また,ビノキにおいてはカテオン溶存量の顕著な増加は認められず,ECの増加原因には,有機酸等が考えられる。渓流水では,pH,ECともに大きな変化はなく,酸性雨がインプットとして流域に入っても,アウトプットとしての渓流水では中性よりの安定した値を示した。渓流水のカテオンではスルーフォール,樹幹流よりNa^+が多く,石灰岩地帯,あるいは風化花崗岩地帯でみられるCa^<2+>,Mg^<2+>などの岩石風化の指標となるものは少なかった。
- 岐阜大学の論文
- 1999-12-27