あるべき臓器移植のルールと制度 : 臓器移植法「見直し」の動きによせて
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概要
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「臓器移植法」(一九九七年十月施行)は、その関連規則である「施行規則」や「ガイドライン」などとともに、数々の問題点を指摘されながらも、死体・脳死身体からの移植用臓器の摘出に関するわが国の基本ルールとして機能し、これらに基づく脳死身体からの臓器提供例も少しずつではあるが数を重ねつつある。しかし「臓器移植法」は周知のごとく、あたかもその不完全さを自認するかのように、施行後三年を目途とした「見直し」の規定(附則第二条第1項)を含んでいる。この「見直し」は、政局や省庁再編などといった政・官界の事情に押しのけられた形て、同法施行から五年を経た時点(二○○二年十月)でもなお国会審議の俎上には上っていないが、国や医療界の目論む「見直し」の方向性と覚しきものは、二○○○年八月に町野朔・上智大学教授を長とする研究班が厚生省(当時)に提出した「臓器移植の法的事項に関する研究-特に「小児臓器移植」に向けての法改正のあり方」と題する報告書(以下「町野レポート」と略称)の内容に表れている。本稿は、「臓器移植法」と関連諸規則に基づいたわが国の現行の臓器移植制度と、「町野レポート」に提言されているその「見直し」の方向性との主要な問題点を倫理学的観点から批判し、今後のあるべき臓器移植制度はいかなるものかを摸索する試みてある。
- 龍谷大学の論文
- 2003-02-20