債権者間の協調の失敗と大口債権者
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概要
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多額の負債を抱えて流動性危機に直面した企業は,他の債権者の取り立てで企業が倒産してしまわないうちに自分だけでも債権を早期に回収しようとする債権者の行動によって,本来であれば再建させるのが望ましい場合でも倒産に追い込まれることがある。本研究では,そのような債権者間の協調の失敗がもたらす非効率的な倒産の可能性に大口債権者がどのような影響を与えるかを,グローバル・ゲームの枠組みを用いて考察した。分析の結果,大ロ債権者と小口債権者が存在する下での負債の債権者間の協調問題において,もしファンダメンタルズが共有知識であれば複数の均衡が存在する場合でも,債権者がファンダメンタルズに関してノイズのある情報しか得ることができないならば,均衡が一意的に決まることが示された。また,比較静学の結果,債権に占める大口債権者のシェアがより低く,また大口債権者が持つ企業に関する情報の正確さがより低くなるほど,小口債権者がより良好なファンダメンタルズの下でも早期に債権を回収する傾向が強まり,企業の非効率的な倒産が起きやすくなる可能性があることが明らかになった。
- 法政大学の論文
- 2003-07-05